H31.4.23(火)の夜、出雲市医師会館にて認知症懇話会研修会が開催されました。開演は19時からでしたが、社内の会議のため、到着は20時過ぎになってしまいました。3人の医師からご講義を頂くようになっていましたが、2人目の先生のお話がほぼ終わりかけの時の到着であり、きちんと最初から聞くことができたのは、エスポワール出雲クリニックの高橋幸男先生のお話だけでした。

高橋先生からは、「BPSDの対応の仕方」との表題でお話を伺いました。その中で、認知症の方を地域で受け入れる文化があるかどうかで、認知症の方の行動心理症状(BPSD)の出現頻度が変わってくるとの事でした。隠岐や石垣島などの離島では、認知症になるのは、「齢を取れば当たり前」のことであり、認知症を特別悪いものであるというような感覚は、本土に比べれば薄いのだそうです。そのような環境の中では、「認知症は、嫌だな、なりたくないな、なったらおしまいだな。」といった、認知症に対するネガティブな感情は薄いため、認知症の方が地域でストレス少なくのびのびと生活していけるとの事でした。

一方本土では、出雲も含め、認知症へのネガティブな感覚が多勢であり、認知症の方々を否定的に捉え、否定的に接する機会が多いため、認知症の方々がストレスフルになり、BPSDの出現頻度も多くなってしまうとの事でした。その仕組みについて、高橋先生が以前から唱えておられるBPSDの出現の構造「からくり」を交え、ご説明頂きました。認知症になると、認知症を認めたくない家族から、励ましや否定(「(正しいのは)こうでしょ。しっかりしてよ。」「違うでしょ、~でしょ。」など)の言葉を繰り返し言われ、自分の存在を否定され、寄る辺なさを感じ、BPSDへ繋がっていくとの事でした。

感想として、認知症の方が地域で、尊厳ある生活をしていくためには、認知症を否定しない意識を、地域住民の方々に持って頂くことが重要であると感じました。そのために、関係専門職も、業務の中で、家庭で、BPSDの仕組みを伝え、認知症の方への間違った対応をできるだけしなくて済むように、教育指導していくことも大切であると思いました。

最後に本題とは外れるかもしれませんが、地域住民への啓発だけでは、認知症の方々を地域で受け入れることは難しいのではないかとも感じました。というのは、近年、認知症高齢者の方の自動車運転による痛ましい事故が後を絶たない状況があるからです。認知症の方による運転ミスが主原因で多くの尊い命が失われている現状があります。このまま、認知症の方の自動車事故による被害が続けば、認知症の方々は、社会に害をなす存在として地域から排除されていくのではないでしょうか。認知症の方々と、地域で共生していくために、認知症の方の自動車運転について、社会における仕組みやルール(例えば、免許更新制度の再検討や後見人の権限や監督責任の見直し、自動車免許を返納した際の代替移動手段を公的制度で保証していくなど。)を早急に検討する必要があると思います。

色々な特性を持った人たちが、同じ社会の中で共生していくために、解決すべき色々な課題があると思います。それぞれの課題に対して、それぞれの立場(自分であればケアマネジャー、社会福祉士)や視点(ミクロ、マクロ的)で、今後も粘り強く関わっていきたいと思います。

川上千春

 

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